空き家は増え続けている
年々耳にすることが多くなった「空き家問題」
では、なぜ空き家が増えているのでしょうか?
空き家の問題は一つではなく様々な要素が積み重なって起って
います。
空き家が増える原因と空き家問題の解決に向けた対策について
考えていきましょう。
1.空き家問題とは
空き家問題とは、少子高齢化が進み人口の減少や、高齢化による転居、経済的背景や現在の経済状況、余剰な住宅の発生と建物の老朽化や管理不全に関する問題です。
空き家が多くなると、町の景観の悪化や、不法侵入などによる治安の悪化など、地域に悪影響を及ぼす事もあります。
これらの問題を解決するために、全国の自治体でも空き家の流通や再利用などの施策を実施していますが、空き家は年々増えており、その対応も追いついていないのが現状です。
2.空き家が増える原因とは
空き家が増える原因には以下のような事が考えられます。
- 人口減少や少子高齢化による住宅需要の低下
- 家族形態の変化による単身世帯の増加
- 経済成長率の低下と新設住宅着工戸数のギャップ
- 管理の手間と費用がかかる
- 相続問題により正式な所有者が決まらない
- 空き家を売らない人が一定数存在する
それぞれの要因について見ていきましょう。
2-1 人口減少や少子高齢化による住宅需要の低下
空き家が発生する主な原因は、需要に対して物件数が多い「家余り」です。
内閣府の調査によると日本の人口は減少の一途をたどっており、2056年には1億人を割ると予想されています。
それに対して総人口に占める65歳以上の高齢者数の割合は増え続ける一方で、2037年には国民の3人に1人が65歳以上になると推測されているのが現状です。
引用元:内閣府|令和5年版高齢社会白書(全体版)
また、人口減少だけでなく、高齢化が進み高齢者の中には、病気などの理由で病院や老人ホームなどでの生活になり空き家になるケースが増えています。
また、空き家が発生する原因の多くは、相続で取得した方が大半を占めています。相続が発生しても跡を継ぐ人が誰もいないことも、空き家が増える原因となっています。現在日本では少子高齢化が進んでおり、今後も多くの相続とそれに伴う空き家の発生が見込まれます。
2-2 家族形態の変化による単身世帯の増加
近年の家族形態の変化、特に核家族化や単身世帯の増加により、大きな住居から小さな住居へとライフスタイルが住宅の需要に変化をもたらしています。
すでに独立している子供世代は都市部に世帯を構えるなど都市部への人口集中なども空き家の原因の一つとなっています。
都市部へ引っ越したあとに実家が空き家化するというケースが多く、距離が離れていることから、放置されてしまうケースも多発しています。
2-3 経済成長率の低下と新設住宅着工戸数のギャップ
経済成長率の実態と新設住宅着工戸数のギャップも空き家問題の一因になっています。
日本の経済成長率は高度経済成長期の10%前後をピークに年々下がっており、2021年においては前年比約1.7%と、かなり低下していることが分かります。
しかし、新設住宅着工戸数は相変わらず多く、空き家が増加する現在でも年間80~90万戸ほどの住宅が新築されています。例えば、令和3年の新設住宅着工戸数は856,484戸で、前年比では5.0%増となっています。
このように、経済成長率が低下している実態があるにもかかわらず、多くの住宅が新築され続けていることも、空き家増加の一因になっています。
2-4 管理の手間と費用がかかる
誰も住まなくなった家を維持、管理するのは所有者の義務です。
しかし、地方にある実家を相続したものの、遠方に住んでいる為、管理をするのは難しく結果、空き家として放置してしまうというケースが多いです。
その他、空き家の維持・管理費用を負担したくないという理由で、そのまま放置している方もいます。
なお、特に保安上・衛生上のリスクが高いとされる空き家は「特定空き家」に指定される場合があります。
特定空き家に指定されると固定資産税減税の特例措置が解除されたり、場合によっては代執行により取り壊されたりする可能性があるため、空き家所有者は特定空き家に指定されないよう、特に気を付ける必要があります。
2-5 相続問題により正式な所有者が決まらない
家の所有者が亡くなった際に誰が相続するかで揉め、新たな所有者が決まらずに放置されるケース
特に、地方部にある老朽化した空き家のように、需要が無い空き家を相続した場合、管理コストに資産価値が見合わず放置されてしまう場合があります。
また、遺産の分け方を決める「遺産分割協議」が行われた場合、相続がさらに長期化する恐れがあります。遺産分割協議には法的な期限がないため、1年以上空き家の所有者が決まらないこともあり得ます。
そのため、相続完了までの管理体制が決まっていないと、雑草や害虫などが周辺に悪影響を及ぼす可能性があります。
2-6 空き家を売らない人が一定数存在する
何の用途にも活用していない空き家であっても、以下の理由から売却をためらっている方がいることも空き家が放置される要因となっています。
- 売却費用がかかる
- 思い出のある家を売りたくない
2-6-1 売却費用がかかる
国土交通省の「空き家政策の現状と課題及び検討の方向性」によると
① 解体費用をかけたくない理由で放置 46.9%
② リフォーム費用をかけたくない理由で放置 23.8%
空き家を売却したくても費用がかかるという理由で諦めている方が比較的多くいることが分かります。
費用がネックとなって空き家の売却をためらっている方は、国や自治体で空き家対策における様々な補助金制度がありますので、相談してみるのも良いでしょう。
2-6-2 固定資産税のルールによる影響
土地の固定資産税には、建物が建っていると最大6分の1に減額される「小規模住宅用地の特例」という制度があり、この特例措置から除外されたくないがために空き家を残すケースも多いです。
解体費用をかけたくないという理由もありますが一方で、更地にしてしまうと税金が高くなってしまうというのも理由の一つとしてあります。
2-6-3 思い出のある家を売りたくない
亡き両親との思い出が詰まった家財道具などをそのままにしている方も少なくありません。
空き家を維持・管理するには手間や費用がかかりますが、それでも実家の売却はためらわれると
考える方が比較的多くその結果、使わないまま放置してしまうという方も多いです。
空き家のリスク
放置空き家のデメリット
risk
倒壊
空家の傷みが進み地震や台風
などで倒壊してしまう
危険性があります。
火災
放火や自然発火などによる
火災は、隣家を巻き込む
大火災に繋がります。
枝のはみだし
枝がはみ出すと、周囲の建物を
傷つけたり、歩行者の
通行を妨げてしまします。
ねずみ・害虫など
ねずみや害虫などが大量発生
すると不衛生な状態に
なってしまいます。
景観の悪化
ごみの散乱、山積みや外壁の
破損・汚損などが放置されると
景観を損ねてしまいます。
不法侵入
不法侵入者に出入りされると、
周辺地域の治安の悪化に
繋がります。
資産価値が下がる
空き家の放置時間が長くなれば、資産価値が低下するリスクは避けられません。
一般的に、一戸建ては、新築時をピークとして徐々に資産価値が下がっていきます。
築20年を超えると、建物の資産価値がほぼゼロとなってしまうケースも珍しくありません。
それに加え、誰も住んでいない空き家は、老朽化が進み外壁がひび割れていたり、設備が壊れていたりする家を売りに出しても、見た目が敬遠されて買い手を見つけるのは難しいといわざるを得ません。
固定資産税がかかり続ける
「小規模住宅用地の特例」という特例措置から除外されたくないがために空き家を残す方が多いですが、
固定資産税は不動産の所有者に課される税金なので、空き家を所有する限り納め続けなければなりません。
また、空き家の管理が行き届かす自治体から「特定空き家」に指定されると、住宅用地の特例の対象外となって固定資産税の負担が最大で6倍になる恐れもあります。
固定資産材の負担が多くなるリスクがあります。
老朽化による倒壊で近隣住民に危害を加える
老朽化した空き家においては、台風や豪雨、地震など、自然災害をきっかけに空き家の一部が壊れ、周辺に害を及ぼす場合があります。これは、周辺に物理的な実害を及ぼす可能性があるため極めて危険です。
壊れた空き家が周辺に危害を与えた場合、その責任は所有者が負うことになります。物的被害はもちろん、人的被害が出る恐れもあるため、自らの社会的信用のためにも注意しないといけません。
空き家や敷地内が荒れ隣家に迷惑がかかる
庭に雑草が生い茂ると周辺の景観が悪化するだけでなく、蚊などの害虫が発生して近隣の方に迷惑をかける恐れがあります。
被害の程度が大きい場合には、損害賠償を請求さることもあります。
自治体からの改善指導・命令があったにもかかわらずに放置を続けると、罰金を科されることもあるので要注意です。
ゴミの不法投棄
空き家が荒廃したり、雑草が生い茂って外からの見通しが悪くなったりすると、ゴミを不法投棄されるリスクが高まります。
不法投棄はれっきとした犯罪ですが、犯人を特定できなければ、土地の所有者が自ら撤去しなければならなくなります。
頻繁に管理を行っていないとゴミを不法投棄されても気づくことができず、さらにエスカレートしてしまいかねません。
特定空家や管理不全空家に指定される
空き家を放置すると、自治体から特定空き家や管理不全空き家に指定されるリスクもあります。
空き家の増加が社会問題となっていることは前述した通りです。
そこで国は空き家の数を抑制すべく、2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」を施行。
空家対策特別措置法
「空家等対策の推進に関する特別措置法」(通称:空家等対策特別措置法)が平成26年11月に成立
以下の条件に当てはまる空き家を「特定空き家」に指定できるようにしました。
- そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上 危険となるおそれのある状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切 な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
管理不全空家とは
2023年12月には「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」を施行。
窓ガラスが割れているなど、このまま放置すると特定空き家になる恐れのある空き家を「管理不全空き家」に認定し行政からの指導・勧告の対象となりました。
特定空き家や管理不全空き家に指定されると、住宅用地の特例が適用されなくなるので固定資産税が最大で6倍に増加します。
また、自治体からの再三の改善命令にもかかわらずに放置を続けると、行政代執行によって強制的に解体されてしまいかねません。
その際にかかる解体費用を負担するのは、空き家の所有者です。
管理不全な空き家の場合、自治体による敷地内への立ち入り調査を行う事ができたり、所有者の確認をするために住民票や戸籍、固定資産税台帳(税金の支払い義務者の名簿)の個人情報を利用できる他、水道や電気の使用状況のインフラ情報を請求できたり、所有者の情報を取得しやすくなりました。
行政代執行とは
所有者に代わり、行政が適正管理に向けた取り組みを行うことです。道路に越境している木の枝を切ったり、放置されているゴミを撤去したり、倒壊しそうな家屋を解体したりすることができます。何度も改善を要求しているにも関わらず所有者が対応してくれない場合、行政が強制的に敷地に立ち入り、必要な対策を取るというものです。
緊急性が高いと判断された時のみ執行されます。これにかかった費用は所有者に請求されます。
空家を放置してしまう理由
reason
不用品が捨てられない
費用をかけたくない
思い出があって処分できない
いつか子供達が使うかもしれない
など、理由は様々あると思います。
しかし、空き家を放置してしまい特定空家に指定されたり、行政代執行などになっては、
罰金が科せられたり税金の負担が増えるなどデメリットの方が多いです。
空き家をそのままにせず早めの対策を取りましょう。
皆様の様々な思いを「空き家塾」も一緒に考えていきます。
市町村空き家対策一覧
各市町村で空き家対策について、空き家バンクの登録、補助金、相談窓口などがあります。
空き家をお持ちの各市町村の対策もご覧ください。